第71章 誕生日パーティー
「脹相」
「なんだ?」
「離さないでね」
「ああ」
「絶対?」
「絶対だ」
「……よかった」
そのまま私は、脹相の首元に顔を埋めたまま、ゆっくり眠り始めた。
脹相は歩きながら、何度も小さく息を吐いた。
今日の私は、いつもよりずっと素直だ。
距離も近い上、言葉も甘い。
だからこそ、脹相は浮かれないようにしていた。
今の言葉も、今の仕草も、明日の〇〇が覚えているかどうかさえ分からない。
それでも、背中に感じる重みと、首元に触れる温かな息だけは、妙にはっきりと分かる。
「……五条」
脹相は小さく呟いた。
「これは確かに、見張っていろと言うわけだ」
けれど、その声には少しだけ笑いが混じっている。
今日の「好き」は、明日の彼女にとっても同じ意味なのだろうか。
それを確かめるのは、今ではない
だから脹相は何も聞かなかった。
ただ、私を背負って歩きながら。
「……明日も、そばにいる」
誰に聞かせるでもなく、小さく呟いた。
その声は、背中で眠り始めた私には届かなかった。