第65章 文化祭の写真
「……そうか」
五条が。
静かに脹相を見る。
「気になる?」
「……ああ」
「何が?」
「……」
脹相は。
写真を見つめる。
「本人が知らないところで」
「……」
「自分の姿が誰かの手に渡っている」
「うん」
「それが」
一度。
言葉を切る。
「落ち着かない」
五条は。
何も言わない。
脹相は。
さらに続ける。
「だが」
「うん?」
「〇〇が許可しているなら」
少しだけ目を伏せる。
「俺が止めることではない」
「……」
「友人や家族が思い出として買うのも分かる」
「うん」
「なら」
脹相は一枚の写真を見る。
「俺が買うのも構わないだろう」
五条が笑う。
「そこに戻るんだ」
「ああ」
「なんでそんなに欲しいの?」
「……」
脹相は。
写真を両手で持つ。
「この写真の中の〇〇は俺の知らない時間に笑っている」
五条の笑みが少しだけ消える。
「文化祭で頑張っている姿だ」
「……」
「俺はその場にいなかった」
「……」
「だから」
脹相は写真を見る。
「せめて、これくらいは持っていたい」
「……」
「〇〇が笑っていた証を」
静かな声だった。
「手元に残しておきたい」
五条は何も言えなかった。
それは単なる嫉妬ではない。
誰かに取られたくない。
もちろんその気持ちもある。
けれどそれ以上に
彼女が頑張っている時間を
彼女が笑っていた瞬間を自分も大切にしたい。
そんな気持ちだった。
脹相は写真を一枚選ぶ。
「……これを買う」
「はい」
「それと」
もう一枚。
メイド服姿の写真を指す。
「……これも」
「二枚ですか?」
「ああ」
五条が横でニヤニヤする。
「メイド服のほうも?」
「……」
「そんなに欲しかったんだ?」
「……○○が写っているからだ」
「はいはい」
脹相は。
五百円を二枚分。
静かに差し出す。
写真を受け取る。
そして。
折れないように
傷つかないように一枚ずつ丁寧にしまった。
「……」
五条は肩をすくめる。
「はいはい」
そして。
写真部員を見る。