第65章 文化祭の写真
「お」
五条が足を止める。
「写真部だ」
「……」
脹相も足を止めた。
壁には。
文化祭の様子を撮影した写真が。
所狭しと並んでいる。
友達同士。
クラスの出し物。
準備風景。
家族と一緒に写っている生徒。
「へぇ」
五条が写真を眺める。
「結構いい写真あるじゃん」
「……」
脹相は。
特に興味がなさそうにしていた。
だが。
数枚進んだところで。
その足が止まった。
「……」
一枚の写真。
そこには。
彼女が写っていた。
文化祭の準備中。
机を運びながら。
誰かと話しているところ。
笑っている。
いつもの。
自然な笑顔。
「……〇〇」
脹相の声が。
小さく漏れた。
五条も気づく。
「あ」
「……」
「〇〇じゃん」
脹相は。
写真を見つめたまま動かない。
その写真の下には。
小さな値札があった。
『販売 500円』
「……売り物?」
脹相が呟く。
「みたいだね」
五条が答える。
「文化祭の売り上げになるんじゃない?」
「……」
その時。
近くにいた男子生徒が。
「これ、まだある?」
写真部員に尋ねた。
「あ、それならありますよ」
「じゃあ買おうかな」
その言葉に。
脹相の目が。
そちらへ向く。
男子生徒が。
あなたの写真へ手を伸ばす。
「……」
脹相が一歩動いた。
「それは」
男子生徒が振り返る。
「え?」
「……すまない」
脹相は。
写真を見る。
「その写真は」
一瞬だけ迷う。
「俺が買う」
「……え?」
五条が横で。
「……おぉ」
と小さく声を漏らした。
男子生徒が。
「いや、でも俺が先に……」
「分かっている」
脹相は。
財布を取り出す。
「譲ってほしい」
言葉は丁寧だった。
けれど。
その表情には。
譲るつもりがないことが出ている。
男子生徒は。
脹相の顔を見て。
「……じゃあ」
手を引いた。
「どうぞ」
「ありがとう」
脹相は。
写真部員へ向き直る。
「これを買う」
「はい。500円です」
脹相は。
迷うことなく五百円を渡す。
写真を受け取る。
そして。
傷つけないように。
両手で丁寧に持った。