第59章 花火大会
花火大会。
待ち合わせ場所に着くと、友達がすぐに声を上げた。
「○○、浴衣めっちゃ似合ってる!」
「ありがとう」
「なんかすごい着慣れてない?」
「昔から着る機会が多かったから」
「それにしても、歩き方まで綺麗」
「そう?」
「うん。なんかお嬢様っぽい」
「やめてよ」
私は笑った。
みんなで屋台を回る。
たこ焼きを買って、りんご飴を食べて。
射的をして、くだらないことで笑って。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
そのうち、空が少しずつ暗くなっていく。
遠くから、花火の打ち上げを知らせる音が聞こえた。
「そろそろ花火始まるんじゃない?」
「見に行こうぜ」
「あ、私は帰るね」
「え、もう?」
「うん。混む前に帰りたいから」
「せっかく来たのに?」
「お祭りは十分楽しんだし」
私は笑う。
「また来ればいいよ」
「まあ、○○がそう言うなら」
そうしてみんなと別れようとした時。
「じゃあ、俺も途中まで行くよ」
男子の一人が言った。
「え?」
「駅まで同じ方向だし」
「あ、そうなんだ」
私は何も考えず頷いた。
「じゃあお願い」
二人で歩き出す。
しばらくは、さっきまでのお祭りの話をしていたが、
やがて、人の少ない道に入ったところで、男子がふと口を開いた。
「……そういえばさ」
「ん?」
「前からちょっと気になってたんだけど」
「なに?」
「この前、学校に迎えに来てた人いたじゃん」
「ああ、脹相?」
「そう、その人」
男子は少し笑った。
「本当に付き合ってるの?」
私は足を緩めた。
「……」
「いや、ごめん。変な意味じゃなくて」
男子は慌てて付け足す。
「今日も普通に男三人女三人で来てたし。彼氏いるって聞いてたから、ちょっと意外だっただけ」
「……うん」
私は困ったように笑った。
「でも、なんか……」
男子は少し考える。
「恋人って感じに見えなかったから」
私は答えに詰まる。
正式に付き合っているわけではない。
だから、「付き合ってる」と言い切るのも。
「付き合ってない」と否定するのも。
どちらも違う気がした。