第43章 腹チラ
「脹相、これ取って」
私は少し離れた棚を指差して立ち上がる。
「分かった」
脹相も立ち上がろうとする。
しかし。
「……!」
その前に。
私が腕を伸ばした拍子に、服の裾が少し持ち上がった。
脹相の視線が止まる。
「…………」
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
私のお腹が見えた。
けれど。
本人はまったく気づいていない。
「ありがとう」
「……ああ」
脹相は荷物を渡す。
「どうしたの?」
「……何でもない」
そう答えながら、脹相は必死に視線を逸らした。
――まずい。
さっき自分の腹が見えたときも、彼女が妙に赤くなっていた。
今なら、その理由が分かる。
けれど。
「……」
脹相は内心で思う。
――俺の腹が見えたときより。
――お前のほうが、ずっと破壊力がある。
しかも。
本人がまったく気づいていない。
それが余計に困る。
「……〇〇」
「ん?」
「服」
「服?」
「……いや」
言いかけて、やめる。
「何?」
「少し……」
脹相はあなたの服を指差す。
「裾が上がっている」
「え?」
彼女は慌てて裾を見る。
「あ、本当だ」
すぐに直す。
「全然気づかなかった」
「……だろうな」
「教えてくれてありがとう」
「……ああ」
あなたは何事もなかったようにソファへ戻る。
「どうしたの?」
「……何がだ?」
「さっきからちょっと変」
「……」
脹相は答えに困る。
「別に」
「本当に?」
「ああ、もしかして」
私は首を傾げる。
そして何気なく。
「私のも見えたとか?さっき脹相のお腹見えたとき、私も恥ずかしかったから」
「…………」
脹相の動きが止まる。
「だから脹相も、私の見て恥ずかしかった?」
「……」
図星。
「……少し」
「ふふ」
あなたが笑う。
「お互い様だね」
「ああ」
脹相も頷く。
けれど心の中では。
――お互い様ではない。
――俺のはまだ耐えられる。
――お前のは、本当に心臓に悪かった。
そう思っていた。
しかも。
本人は、自分がどれだけ破壊力のある姿を見せたのか。
最後まで気づいていない。
「……」
脹相は密かに息を吐く。