第10章 盗み聞き
『あの、すいません。ヘルマンはいらっしゃいますか?』
オスヴァルトはいきなり呼ばれたので多少びっくりしながら後ろを振り向いた。
そこには、警察官の制服を着た男が立っていた。
『お前は誰だ?ヘルマンの知り合いか?』
オスヴァルトが男に尋ねると、男は頷いた。
『はい、ヘルマンと遊びに来ました。』
オスヴァルトは自分の知らない男がヘルマンと遊ぶなんて、気に入らなかったがヘルマンの客なのでヘルマンの部屋を教えた。
『ありがとうございます。』
男はそう言ってヘルマンの部屋へ向かった。
オスヴァルトは制服姿の男の背中をみて ふとこんな考えがうかんだ。
ヘルマンとよからぬ事をしに来たのでは?
オスヴァルトは自分の気持ちを抑えきれずに男の後を追った。
男は、ヘルマンの部屋をノックしていた。
そして、中からヘルマンが出てきた。
『これはこれは、お久しぶり』
ヘルマンは男に会った途端、顔が明るくなったのがわかった。
二人は、笑いながら部屋に入って行った。
オスヴァルトはすかさず、ドアに耳を近づけた。
幸い広い部屋ではないので声がはっきりと聞こえた。
『ルート、今日は何をしましょうか。』
ヘルマンの声だった。男はルートというらしい。