第5章 【第4章】選ばなかった未来_景色
夢主side
「背番号を一旦白紙にする」
監督のその言葉で一瞬にして空気が変わった。
学年なんて関係ない。
夏の本戦までに結果を残せた20人が選ばれる。
ただ、それだけ。
私はその空気に息を飲むことしか出来なかった。
ミーティング後――。
「先輩、ちょっといいですか?」
「どうしたの?」
真剣な顔をした沢村くんに呼び止められて、片付けの手を止める。
「キャッチャー目線で見た時に、自分ってどのくらいリードしやすいですか?」
……珍しい質問。
随分考えながら投げるようになったなぁ
少し感心しながら、返事を考える。
このタイミングでのこの質問の意図。
きっと、沢村くんの欲しい答えは……
「さぁ?」
あっけらかんと答えた。
「私より、適任がいるでしょ?」
そう言って私は監督と明日の打ち合わせをしている背中へ目線を送った。
しかし
「でも、あの人忙しいって断りそうだし……」
沢村くんは少し渋い顔をする。
けれど
「私と一也じゃ、リードの癖が少し違うし、配球の組み立ても一也の方が一枚上手だよ」
「沢村くんの本当に知りたい事はきっと一也にしか教えてもらえないよ」
私がそこまで言うと、沢村くんは
「そうっすよね、ありがとうございます」
と頭を下げた。
「なんだかんだ言って面倒見良いから、追い返される事ないと思うよ」
「キャップの優しさ分かりづらい!」
「そうそう!その意気!」
「誰の優しさが分かりづらいって?」
いつの間にか背後に立っていた一也に、
沢村くんの肩が大きく跳ねた。
「げ、いつからそこに……」
「ついさっきだよ」
「なんとタイミングの悪いキャップ……」
「お前、シバくぞ」
そんな二人のやり取りにさっきまでミーティングの空気が嘘みたいに感じた。
「沢村くんが折り入って一也に話あるみたいだよ」
「あ?なんだよ。優しい優しいキャプテン様が聞いてやるよ」
わちゃわちゃした空気に沢村くんは少し口を閉じた。
「あの……ここじゃ話しづらいんで夜部屋行って良いっすか?」
真剣な顔に戻った沢村くん。
「あぁ、いいぜ」
一也は少し意外そうに目を細めながらも、それに頷いた。