第39章 【第三十四話】約束を守るために
方舟が消える前に。
アレンたちが進んだ先へ辿り着くために。
そして、ラビとの約束を守るために。
ティファは、鋭く息を吸った。
「……私は前に進む」
霧の中で、ヴェインの声がした。
「おいで、ティファ」
空間が軋む。
時間が裂ける。
そして、最初の刃が迫った。
ティファは反射的に左のレイピアを掲げた。
甲高い金属音が、霧の中へ響き渡る。
「っ……!」
衝撃を受け止めきれず、身体が横へ弾かれる。靴底が石畳を擦り、崩れかけた床の縁でどうにか踏み止まった。
すぐに顔を上げる。
けれど、そこにヴェインの姿はない。
「遅い」
背後で、声がした。
振り向くより早く、肩口へ鋭い痛みが走る。
「っ……!」
団服の布地が裂け、血が飛んだ。
ティファは歯を食いしばりながら刃を振り抜く。
けれど、光を帯びた切っ先は霧だけを裂いた。
遠くに立っているはずのヴェインが、次の瞬間には背後にいる。
捉えたと思えば、もう別の場所へ移っている。
速いのではない。
ずれている。
彼の動きだけが、この場の時間から半歩先を歩いていた。