第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
医務室は静かだった。
消毒液の匂いと、白いカーテン。
戦闘後特有の張り詰めた空気が漂っている。
包帯を解かれた瞬間、医療班の女性が顔をしかめた。
「新しい裂傷自体は浅いですが、以前の傷が開きかけています。こちらは思ったより深刻ですね……無茶しました?」
「少しだけ」
「少しで済む傷じゃありません」
呆れた声に、私は苦笑する。
傷口へ薬が塗られる。
じわりと熱い。
けれど、それ以上に胸の奥の方が落ち着かなかった。
ラビに抱き寄せられた時の熱。
汽車の中で絡められた指。
アレンの真っ直ぐ過ぎる眼差し。
思い出すたび、呼吸が浅くなる。
「ティファ?」
不意に、柔らかな声がした。
振り返ると、リナリーが心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫?」
「……ええ」
返事をしたつもりだった。
けれど、リナリーは少しだけ眉を下げる。
「大丈夫って顔じゃないよ」
その声に、張っていた気持ちが少しだけ緩んだ。
私は小さく息を吐く。
「……少し、疲れただけ」
「本当に?」
「本当よ」
そう言うと、リナリーはじっと私の顔を見つめた。
そして、ふっと小さく笑う。
「ティファって、すぐそう言うんだから」
少し拗ねたような口調に、私は思わず笑ってしまった。