第42章 【第三十七話】声なき再会
そうだ。
この場で誰より、ティファの喉の状態を分かっているのは、この男だ。
助けたのも。
運んだのも。
「無理に声を出させるな」と言ったのも。
クロスは指を離し、ゆっくりと立ち上がった。
その慌てぶりを一瞥し、鼻で笑った。
「……ったく。番犬か、テメェは」
「んなっ……!」
煙草をくわえ直しながら、あっさり背を向ける。
一方、アレンの怒りはまだ収まっていなかった。
「犯罪です! 師匠!!!!」
「なんだ馬鹿弟子。16なら立派な女だろうが」
「元帥、煽らないでください……!」
リナリーが、疲れたように額を押さえた。
クロスは煙を吐き、それから、ちらりとラビを見た。
口の端が、嫌な形に上がる。
「……じゃあ何だ。18のティファなら、文句ねぇのか?」
「なっ!? テメェそれどういう――」
噛みつきかけて、気づいた。
クロスが、面白そうにこちらを見ている。
完全に、釣られた。
「……冗談だ。誰が寝てる馬鹿弟子に手ぇ出すか」
くだらなそうに煙を吐く。
「弟子は弟子だ。……そんなに気になるなら、そこで見張ってろ。番犬」
「〜〜っ!」
騒がしさが戻ってくる。
だが、ティファは騒ぎの中でも、目を覚ます気配はない。
(……容態、変わってねぇんだな)
クロスが診た。
それが分かっただけで、少しだけ、胸の強張りがほどけた。