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呼ぶ子

第2章  呼ぶ子沢のお話ーふたつめー


うっとりとその様子に見とれていると、突然、バシャっと大きな水音があった。K子が振り返ると、音のする方を同じように見ているR子が目に止まった。

水が波立っている中心にはなにもない。見回すと、一緒に泳いでいたはずのS子がいない。

K子は周囲を見回した。岸にもS子はいない。
ゾッと背筋に冷たいものが這い上がる。
大きな水音、いなくなったS子。
K子とR子は慌てて水の中に潜ったりしてS子を探した。

10分ほど探したが、S子の姿を見つけることはできなかった。

二人は大急ぎで村に取って返し、親に事情を説明した。村では警察や消防団も含めた捜索隊が組織され、呼ぶ子沢で大規模な捜索が行われた、が、ついに、S子は発見されなかった。

「当時、S子の母親は随分K子の親を責めとった。無理もないことだ」

T先生は言う。K子自身には表立って非難の言を向けなかったが、親にはかなりきつくあたっていたようだった。捜索は続いたが、1ヶ月しても遺体を発見することができなかった。

「本当に恐ろしいのは、この後だ」
T先生は茶をすすりながら続けた。

事件から2ヶ月ほどしたころだったか、K子が一人で家にいると、家の中でペチャペチャとなにか濡れたような音がする。正確に言うと、濡れた足で廊下を歩くような音だった。

不審に思って廊下を見回しても誰もいない。ただ、床に大きな水たまりができていた。

また、別の日。K子がコップで水を飲もうとすると、コップの水に影が映る。よくよく見ると、いなくなったS子の顔に見える。驚いてもう一度よく見ると、消えている。

さらに、K子が風呂に入っていると、湯船の水面にどういうわけか、自分とは違う顔が映っているように見えてならない。じっと見ていると、見る間にその影が濃くなり、水面が盛り上がってくる。見る間に黒髪の女の子が風呂の中から顔を覗かせる。

ぎゃあ!と叫んで、とっさに手を前に突き出した。その手が風呂の縁においてあった入浴剤の缶を倒してしまい、入浴剤がお湯に溶ける。

それにつれて、その頭自体もスーッと溶けて消えた。
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