第9章 ふたりきりで
「千景、準備できた?」
扉の向かうから、ノックと憂太の声が聞こえる。
慌てて扉を開け、憂太を招き入れた。
「あとは着替えるだけ。待ってて」
扉を閉めて、憂太はクスクス笑い出す。
「僕の前で着替えてくれるの?ありがとう」
憂太を見つめて数秒固まり、背中を向けさせた。
――何度も見られてるのに、どうして慣れないんだろう。
肩を揺らす憂太の背中をペシペシと叩いて、服を脱ぎ始める。
憂太が振り向く気配はない。
下着姿になり、ワンピースを着ようと足を通す。
憂太のつま先がこちらを向いた。
特に何か反応することはなく、諦めて着替えを続ける。
それでも、心臓はうるさかった。
「……デートの前に、味見してもいいかな……」
ひとりごとのようにボソッと言っていたが、無視した。
背中のファスナーを締めよくとすると、クルッと回された。
締めてくれるんだろうと思い、大人しくしていると、首筋に温かいものが触れる。
チクッとした甘い痺れを残して、憂太はファスナーを締めた。
鞄を持つと、「行こ」と手を引かれて、寮の部屋を後にする。
これから、憂太とデート。
前に言っていた、レンタルルームに行くと言っていた。
――憂太としちゃうのかな……。