第7章 約束の結末
ユキは表情を変えずに話を続ける
「すごく懐かしい気持ちになった」
「でもね。それと同時に、昔は同じグラウンドにいたのに……」
「そう思ったら少し寂しくて」
「……今こんなこと思うのもおかしいんだけどね」
ユキはそう言って苦い笑いを浮かべる。
その笑顔に少し考える。
「……さっき、病院でよ」
俺は唐突に話を変えた。
ユキは再び驚い顔をしていた。
けど、黙ったままはなしをきいていた。
「応急処置のテーピングなかったら、悪化してただろうって言われたんだよ」
その言葉にユキの瞳が揺れた。
「だから、お前もちゃんと戦ってたよ」
「俺と一緒にキャッチャーズボックスに座って」
「そっか……」
ユキはそう言って静かに涙を流した。
その涙に一瞬驚いた。
でも、
前みたいな嫌な涙じゃなかった。
俺は無意識にユキの頭に軽く手を置いた。
「約束、果たせたな」
「……うん」
夢主side
幼い時にした「一緒に野球をしよう」という約束。
時が経ち、約束の形が変わってもなお、
私たちは果たした。
「長かったね」
私はゆっくり話した。
「ありがとね、御幸」
私の言葉に
御幸は一瞬だけ目を伏せる。
「勝手に終わった気になんなよ」
そう言って御幸は私をまっすぐ見る。
「甲子園の本戦はこれからだろ」
その目は鋭い決意を持っていた。
「だから、次の約束だ――」
「野球とか甲子園とか関係なく、
俺のそばで支えてくれねぇか?」
そう言った御幸の目を
私は離すことは出来なかった。
けど……
「やだ」
短く返す。
御幸の驚いた顔をそのままに
私は言葉を続ける。
「支えるんじゃなくて、一緒に戦わせて。
同じものを背負わせてよ」
その言葉に御幸の瞳が少し揺れる。
少しの沈黙のあと、
御幸は小さく頷いた。
「ほんと、敵わねぇなユキには」
いつもより優しい声。
「……一也。好きだよ」
気がつくと、私の口は勝手に動いていた。
「あぁ。俺も」
そう言った一也の声には
動揺も迷いも何もなかった。
沈黙が二人の間を流れ、
自然と一也の腕が私のほうへ伸びた。