第7章 約束の結末
「バックホーム!」
麻生くんの返球が一直線にホームへ伸びる。
タイミングは――アウト。
けれど
そのまま止まることなくランナーがホームに突っ込んできた。
「――っ!」
激しい衝突音。
舞い上がる土ぼこり。
一瞬何も見えなくなる。
「御幸…!」
思わずこぼれた声。
観客席にもざわめきが広がる。
次の瞬間
土ぼこりの中から出てきたのは――
倒れ込みながらもミットからボールを離さなかった御幸の姿だった。
審判の声がはっきりと響く。
「アウトー!」
湧き上がる観客席。
グラウンドでは球審から注意を受ける相手選手。
そして――
ゆっくり立ち上がって
何事もなかったかのようにベンチへ向かう御幸。
その姿が私には逆に違和感に感じた。
……私の気のせいであって……
私の思いとは裏腹に
違和感が現実のものとなるのは思っていたより早かった。
――延長十回表。
沢村くんは八回の動揺もなくなり
「ナイスピッチ!」
観客席からも声援が続く。
しかし――
御幸のリードは不自然そのものだった。
……何をそんなに焦ってるの?
いつもはもっと余裕のある
ピッチャーに合わせて流れを作るリード。
なのにら今は――
球数を抑えて、無理矢理打たせて終わらせようとしてる。
明らかに急いでいる。
それに――
九回から感じている違和感。
構えに入るまでの一瞬の間。
捕球から送球までの僅かなズレ。
……やっぱりおかしい。
あの御幸が疲れとかで出る粗ではない。
「――っ」
次の一球。
沢村くん荒れ球が若干ミットの位置をズラす。
ミットには収まった球。
しかし、さっきまでとは一段と送球が遅れた。
……やっぱり、どこか庇ってプレーしてる?
一体どこを――
次の瞬間、
御幸がマスクの下で一瞬渋い顔をした。
……っ!まさか
胸の奥が冷たくなった。
私の中の違和感が確信へと変わった。