第7章 約束の結末
「御幸、怖い顔になってるよ?大丈夫?」
朝練終わりの教室で頭を悩ませていたら、
遅れて入ってきたユキに声をかけられた。
「もしかして、沢村くんのこと?」
「あぁ。この間の試合もインコースまだ入り切らなかったからな」
「んー」とユキは何か発そうとしたが、口を一度閉ざした。
「まぁ、大丈夫だよ。」
すぐ開いた口から出たのは
根拠のない自信のような言葉だった。
でも――
目はまっすぐ俺を見据えていた。
「沢村くんの言葉、聞いてあげて」
「私から言えるのはそれだけ」
ユキがそう言い終わると、
タイミング良くチャイムが鳴る。
「沢村の言葉、ねぇ……」
明確な答えを持ってるくせに、
あいつは、絶対教えてくれねぇ。
……言葉っつーより、球を見た方が早いか。
チャイムの余韻が消える頃には
俺は前を向いた。
――秋大2戦目
「見てほしい球がある」
そう言われて、試合前にブルペンへ俺を呼んだ沢村。
面白がって着いてきた倉持を立たせて投げさせた。
パシュ――
「……は?」
俺と倉持は固まった。
「どうっすか!?この球!前原先輩に付き合ってもらって隠れて練習してたんすよ!」
……この事だったのか。
「……投げたよな」
「へ?」
倉持が俺に確認するように言った言葉に
沢村が間の抜けた声を出す。
「インコース、投げたな」
「……はっ!言われてみたら!!」
「無自覚かよ!」
倉持の鋭いツッコミが入った。
……あいつ、良い形で沢村を仕上げてきやがった。
それも、ベストなタイミングで。
「敵わねぇな……」
誰にも聞かれないくらい小さく吐き出した。
視線の先では、沢村がまだ興奮気味に肩を回している。
「沢村」
「はい!」
「さっきの球、試合で使うぞ」
「えっ、マジっすか!?」
一瞬だけ不安が混じる。
当然だ。
まだ完成してる球じゃない。
「外してもいい」
「……!」
「その代わり、逃げんな」
低く言い切る。
一瞬の沈黙のあと、
「……はい!」
さっきよりも強い返事が返ってきた。
「行くぞ」
俺はミットを軽く叩き、マウンドへ走った。