第9章 人拐い
アリスはソファの上で正座していた。
眼の前に立つのは、中原中也だ。
その顔はまるで般若のようーーー。
「ネックレスが壊れたのは仕様がねえ。此れは直ぐに修理に出してやる」
「はい」
「拾ってくれた少女を追いかけた内に、一緒に捕まって助けたーーーこれも別にいい。どうせ潰す予定だった組織だ。すぐにでも叩き潰す」
「…はい」
「扶けた女の中に武装探偵社の社員が混ざってたーーーこれも偶々だ。仕方ねえ」
「……はい」
此処までは、まだ良かった。
が、いきなり中也の怒りの度合いが上がる。
「で?何で太宰の糞野郎と鉢合わせてやがるんだ?」
「えっと…それはですね……」
「真逆、武装探偵社ッて判った時点で態と会いに行ったわけじゃねぇだろーな……?」
「それは断じて違ッ……!」
言い訳する口を塞ぐ中也。
暫く言葉を紡がせる気がない口付け。アリスは大人しく受け入れている。
漸く開放したかと思うが、中也の怒りはまだ収まっていない。
「納得いく言い訳してみろよ」
「あの…この状況になるように陥れられたと云いますか……嫌がらせを受けたといいますか……」
「何で手前が嫌がらせを受けてる?」
中也の手が、アリスのブラウスのボタンを外しに掛かる。
「それは…この間のッ、中也と治兄のやり取りを高みの見物してた、ことに気付かなかった事を…、その、気付かなかった中也と同じって云ったからっ……」
「へぇー」
既に聞く耳が無い中也。
言い訳したところで行き着く結果など同じだったのだ。
当に太宰の予想通りにーーー。
「此処と俺の仮眠室、何方がいい?」
アリスは早々に諦めることにして、仮眠室を選んだのだった。