第1章 プロローグ
僕には物心つく前から一緒にいる、関係がよくわからない女の子がいる。
その子は父親が僕にあてがった"何か"だと思うが、その"何か"がまだわからない。
その子は今も僕の傍にいて、僕の家で僕を待っている。
そのことを不快とも思わないし、もう当たり前になっていた。
「宗四郎様、おかえりなさい」
帰ってきた僕を玄関で迎え、静かで穏やかな声を落とすと、僕の胸に寄り添ってくる。
控えめに、僅かに頬を擦り、上から見下ろすと睫毛が揺れ、ゆっくり離れていった。
「……ただいま、紫音」
胸に触れたままの指が腹を滑り、太腿を通ってブーツに辿り着く。
ファスナーを下ろし、締め付けがなくなった足をブーツから抜いた。
ブーツを整える彼女を上から見下ろし、髪を僅かに撫でる。
振り向いた花に駆り立てられる情欲を表に出さないように、奥に押し込めた。
柔らかくスッと伸びた黒髪、長い睫毛、くっきりとした二重に大きな瞳。
肌は白く、形の良い唇は紅を差しているように紅い。
丸みを帯びた胸は恐らく柔らかく、動く度に揺れる。だが、そこまで大きなわけではない。
きゅっと絞られた腰に指を滑らせると、僅かに肩が跳ねた。
「あぁ、すまん。溜まっとるみたいやわ〜、許して」
逃げるようにふざけて謝り、リビングに向かう。
あんなん……"そういう風に使え"言われとるようやわ。
本能に負けるような理性は持っとらん。たぶん……。
僕の日常は、そんな強炭酸のような刺激の中にある。