第33章 部屋の中の溺死体
『第四の場面』
映像がものすごく揺れている。は、は、は、という激しい息遣いとともに、
ざっざっざ
ざっざっざという地面を蹴るような音がする。
ビデオカメラを持ったまま走っているようだった。
『あ~!』
時折、喘ぎとも、悲鳴ともつかない声がする。
ビデオを持って走っている人の周りにも数人いる気配がする。
はー、はあ、はあ・・・
映像の大きな揺れがとまり、小刻みなゆれになる。映像は相変わらず暗闇で、どうやら服の一部が映っているようだった。
『なんだよ、あれ。なんで車の中にあんなのがいるんだ?』
『どうするの?』
『めちゃくちゃ走ってきたけど、ここどこだよ』
『ちょ、まて、落ち着こう・・・』
肩で息をしながら、口々にもらす。どうやら、4人とも周囲にいるらしい。
『あれ、撮れたか?』
『いや、撮れてない・・・。あれ?録画スイッチ入っている・・・。あーだめだ。』
『ちょっとあれ!何!?』
女性の声、R.Sだろう。
カメラが向けられるが、暗闇で何も見えない。
『たくさん・・・なんだよ』
カメラに薄暗い森が逆さに映る。撮影者がビデオを持ったまま手を下げたようだった。
その後は薄暗く、揺れる画像の中、若者たちの声だけがする。
『とにかく、走れ!車にもどれ!』
『でも、さっきのまだいるんじゃ?』
『でも、他に方法がないだろう』
『待って!足が・・・いやー!!』
なにか、大きなものが水たまりに倒れ込んだような水音がする。
『おい、待て、S。Rが落ちた』
『何してんだよ!』
バシャバシャと水音がする。
『早く!助けないと』
画面がひときわ大きく揺れたかと思うと、急に静止する。地面に投げ捨てられたようだ。
遠くで『おい大丈夫か』『掴まれ!』などという声とともに、バシャバシャと何人もが水の中に入る音がする。
ビデオの前にザッと音を立て、誰かの足が映る。
映像はそこで終わった。