第1章 【GS1】1章_姫条まどか 愛おしいほどに
夢主side
姫条「美奈子。…俺じゃ、あかんかったんか?」
額を預けて、絞り出すように呟いた姫条くんの声は、今にも泣き出しそうに震えていた。
いつも明るくて、頼れる「にいやん」の、見たこともない脆い姿。
掴まれた手首の痛みよりも、彼のその言葉が、私の胸を激しく締め付ける。
夢主「…そんなことない…。姫条くん、私……」
答えた瞬間、彼の瞳に宿った光が、一気に熱を帯びた。
姫条「ほんまか…? なら、あいつの匂いなんて、今すぐ忘れてえな」
彼は、さっきまでの乱暴さが嘘のように、甘く、溶けるような口づけを落としてきた。
葉月くんの静かな熱とは違う、焼き尽くすような情熱。
抗わなきゃいけないのに、彼の腕の中にいると、毒を盛られたみたいに思考が麻痺していく。
(……ああ、私。……最低だ)
昨夜は葉月くんに抱かれ、今は姫条くんに翻弄されている。
でも、どちらの手も振り払うことができない。
そうして、姫条くんの部屋で深い夜を過ごした翌朝――。
玄関のドアを開けた私の前に、立っていたのは、冷ややかな微笑を浮かべた葉月くんだった。
葉月「遅かったな、美奈子」
夢主「は、葉月くん!? なんで」
後ろから、姫条くんが顔を出し、葉月くんを鋭く睨みつける。
姫条「お前、待ち伏せか? 執念深いなぁ」
葉月「お前に言われたくない。美奈子、こっちに来い」
葉月くんの手が、私の左腕を掴む。
同時に、右腕は姫条くんに強く引き寄せられた。
姫条「離せや。美奈子は今、俺と一緒に」
葉月「関係ない。昨日言っただろ、待ってるって」
左右から引っ張られる、二人の熱い体温。
独占欲に満ちた二組の瞳が、私を逃さないと宣告している。
夢主「っ、」
私の小さな抗議なんて、今の彼らには届かない。
姫条「嫌や。自分を誰にも渡したない。葉月にも、な」
葉月「同感だ。……美奈子は、俺のだろ?」
奪い合うように、私の体は二人の間に沈み込んでいく。
どちらか一人なんて、もう選べない。
昨夜の余韻と、今朝の熱。
二人の王子の執着に塗り潰されながら、私はこの終わらない夢の中に、深く溺れていくことしかできなかった。
姫条「…俺だけを見ろ」
葉月「…俺だけを、見てろ」
その言葉は、私を一生縛り付ける、甘く残酷な呪いだった――。完