第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
スタジオの重い扉を開けると、そこは強烈なフラッシュの光とスタッフたちの喧騒に包まれていたーー。
「おはようございます!入ります。本日はよろしくお願いします」
彼女が凛とした声を響かせると、現場の空気が一変した。
数々の表紙を飾ってきたトップモデル。
その存在感は、ただそこに立つだけで周囲の色彩を鮮やかに塗り替えてしまう。
対照的に、セットの隅で硬い表情を浮かべていたのが、若きヒーロー・ショートである轟焦凍だった。
今日はファッション誌の特別企画「ヒーロー×モード」の撮影。
慣れ親しんだ戦闘服ではなく、ハイブランドの繊細なスーツに身を包んだ彼は、どこか居心地が悪そうに自身の袖口を見つめていた。
「ショートさん、ですね。初めまして」
が歩み寄ると、轟はわずかに肩を揺らして視線を上げた。
「……ああ、初めまして。……すまない、こういう場には慣れていなくて」
ポーカーフェイスを崩さない彼だが、わずかに力んだ指先が緊張を物語っている。
は、ふっと柔らかい笑みをこぼした。
「大丈夫。ショートさんはそのままでも十分、絵になりますから。……ちょっと、失礼しますね」
彼女は自然な動作で一歩踏み込むと、彼の歪んでいたネクタイの結び目を指先で整えた。
ふわりと香る彼女の香水が、轟の鼻腔をくすぐる。
「私の動きに合わせてくれればいいですよ。リードしますから、私をヴィランだと思って捕まえるくらいの気持ちで」
「……ヴィランを、こんなに優しく捕まえたことはない」
「……ふふっ、ショートさんって、天然なんですね」
轟が真面目な顔でそう返すと、今度はが小さく吹き出した。
おかげで、二人の間の空気が少しだけ解けた。