異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第14章 懲りずに陥れたいの? 後編
――その夜。
私は日記を開く。
新しいページに箇条書きで書く。
・リリアーナの物語
構造:悪役(私)
被害者(彼女)
観客(学院)
ペンを止める。そして、ゆっくり書き足す。
問題点
・事件の物理条件が増えすぎている
・目撃者の数が増えている
・演出回数が多すぎる
私は少し考えてから、最後に書いた。
“物語の成立条件:矛盾が観客に見えないこと”
そして今、矛盾は見え始めている。
私は窓の外を見る。月が高い。
学院は静かだ。
だが、物語は静かではない。
水面の下で、確実に軋んでいる。
リリアーナの物語はまだ終わっていない。
崩れてもいない。
だが……
ひとつだけ確かなことがある。
最初に壊れるのは、“証拠”ではない。“信頼”だ。
涙が信用されなくなった瞬間――
被害者の物語は、ただの演技になる。
私は日記を閉じる。
エミリア・ヴァレンシュタインは泣かない。
そして今、私は知っている。
彼女が一番恐れているものは、断罪ではない。
――沈黙だ。
観客が、物語を聞かなくなる瞬間。
それが来たとき、リリアーナの舞台は、静かに崩れる。