後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第13章 事件発生! 後編
でも、胸の奥で思う。世界がまた少し広がった。
そしてきっと——
あの方はもう知っている。
私は次の物語に入ったのだ。
私は洗濯場から外された。
下女から――洗衣房付・下級女官見習いへ。
帳簿に名が載る身分。正式な部署所属。たった一階級。
けれど、もう“使い捨て”ではない。
桃児が知らせを聞いて私の元にやってきた。目を丸くしながら訊ねる。
「琳、何したの!?試験なしに下級女官見習いなんて……」
「何もしてないよ。ただ洗濯してただけ。」
私は肩をすくめた。
本当は四妃の衣の異変に気づいたのがきっかけなんだろうけど、女官試験なく、下級女官見習いになれたのは多分あの方が裏から手を回したんだろう。
それしか考えられないもんな……
しかしこの事は桃児には言わない方がいい。何か危険が及んだ時に巻き込んでしまう恐れがある。
「運が良かったんだよ。」
笑ってごまかした。
でも分かっている。これは褒美ではない。試験だ。そして監視。廊下で黎明が低く告げる。
「勘違いするな。あの方はお前を気に入ったわけではない」
「存じています」
「利用できるか見ているだけだ」
「それで十分です」
私は静かに言う。
「利用される位置に立てたなら、一歩ですから」
黎明は一瞬言葉を失い、やがて小さく息を吐いた。
「……油断するな」
遠くで鐘が鳴る――夜が落ちる。
私は桶ではなく、帳簿を抱えて歩き出す。
私は試されている。
秘密裏にこの事件の解明を求められているのだろう。
捜査に下級女官見習いは都合がいい。
でもあの方の正体は知らない。
けれど確かなのは、私の世界が、ほんの少し広がったこと。
恋か、策略か――まだ分からない。
でも、次に呼ばれる時……それはもう偶然ではない。