後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第5章 琳 後編
「うわぁ~ん!阿琳!ありがとう」
桃児が泣きながら、私に抱きついてきた。
私は桃児を抱きしめて、頭をぽんぽんと撫でてあげた。
「大丈夫だよ。さ!残りも終わらせちゃお!」
桃児は頷き、私たちは四妃の衣を洗い上げた。
「ほぅ…面白いものが見れたな」
この一連の事件を、壁の影で聞いてる素服姿の人物がいた事を私は何も知らなかった。
洗濯場に、夕刻の淡い橙色の光が差し込む。
四妃の衣を干し終え、桶の水を替えようとしたその時だった。
背後から、低く落ち着いた声が響く。
「先ほどの縫い、見事だったな」
びくり、と肩が跳ねる。
振り返ると、そこに立っていたのは質素な素服の男。
飾り気のない深い紺の衣だが、布地は明らかに上質。
その半歩後ろに、同じく素服姿の声をかけてきた男性より少し年上風の男が控えている。