かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第1章 かぐや姫は好きな人に自力で会いに行く!!
歌舞伎町の夜は、いつだって湿った酒の匂いと喧騒にまみれている。
その日も銀時は、馴染みの店でなけなしの金を絞り出し、フラフラと千鳥足で歩いていた。
月明かりすら届かない、入り組んだ路地裏。
いつもなら気にも留めないその闇の奥から、突如として光が溢れ出した。
「……あァ? なんだ、パチンコ屋のネオンにしちゃあ上品すぎんだろ……」
毒づきながらも、銀時の足は無意識に光の方へと向いていた。
路地の突き当たり。
光は一瞬だけ銀世界の輝きを放ち、そして、ぷつりと糸が切れるように消えた。
光が去った後の静寂の中、そこには仄かに光を纏ったような女が立っていたーー。
「…………」
銀時は言葉を失い、その場に釘付けになった。
夜の闇に浮かび上がる彼女の姿は、あまりにも浮世離れしていた。
整いすぎた目鼻立ち、透き通るような肌、どこか遠い星を眺めているような、虚ろで、けれど吸い込まれそうな瞳。
そして背中を伝い流れる、月を思い起こさせるほど透明感のある長い髪。
纏っている装束も、この世の理から外れていた。
着物ともドレスともつかない、不思議な仕立ての衣。
夜の深淵を写したような色合いに、精密な刺繍が息づくように煌めいている。
だが、何よりも銀時の心を鷲掴みにしたのは、ふと向けられた彼女の眼差しと、髪の一部を纏めている二本の対になった白磁の『簪』だった。
闇の中で、彼女の瞳が銀時を捉える。
それは、まるで世界中の光を一点に集めたような、鮮やかな黄金色をしていた。
「……っ」
一瞬の沈黙。
その輝きに見入られた瞬間、銀時の心臓がドクンと大きく跳ねた。
これまで見てきたどの景色よりも、どんな宝石よりも、その黄金の瞳は強烈な引力を放っている。
魂を直接覗き込まれたような、逃れられない予感。
それは、運命の歯車が軋みを上げて回り出すような、暴力的なまでの衝撃だった。
「おい、あんた……」
銀時が震える声で問いかけようとした瞬間、彼女の瞳からふっと光が失われ、膝から力が抜け、身体が崩れ落ちた。
「お、おいっ!? ちょっ、ちょっと待て、俺のせいじゃないよなこれ!?」
慌てて駆け寄り、地面に叩きつけられる寸前でその細い肩を抱きとめる。
腕の中に伝わる体温は驚くほど微かで、今にも消えてしまいそうだった。