かぐや姫だって幸せになりたい!!【銀魂 坂田銀時】
第2章 かぐや姫は月に帰りたくない!!
万事屋の家計は、いつだって薄氷を踏むような危うさの上にある。
その日はついに、氷が音を立てて割れた。
「……銀さん、通帳の残高、見てください。これ、もはや数字じゃなくて暗号ですよ。ゼロが並びすぎてゲシュタルト崩壊しそうです」
「新八、それを言うなネ……。私、定春のエサも、自分の酢昆布も、もう三日も我慢してるアル。このままじゃ飢えた狼になって、銀ちゃんの天パを食いちぎってしまうネ」
テーブルに突っ伏す二人に、銀時は力なく鼻をほじってみせるが、その目は死んでいる。
「……銀さん、私の耳飾りを。これを売れば、しばらくは……」
が心配そうにあの宝石の如き装飾品を差し出すが、銀時はその手を、いつになく力強く押し戻した。
「……却下だ。言っただろ、そいつはアンタの『一部』だ。そんなもん切り売りして食う飯なんて、美味くもなんともねーんだよ」
その時、居間の古いテレビから、耳障りなほど陽気なファンファーレが鳴り響いた。
『――さあ! 優勝賞金百万円! 歌舞伎町・のど自慢大会、今夜開催決定!!』
その瞬間、万事屋の三人の目が、獲物を見つけた猛獣のようにギラリと光った。
会場となる屋外特設ステージは、熱気に包まれていたが、万事屋チームの成績は惨憺たるものだった。
「お前の歌はただの愚痴だろ!」と審査員に一喝された銀時、マイクを破壊した神楽、そして音痴を暴露しただけで終わった新八。
「……終わった。俺たちの百万円が、今、翼を授かって飛んでいった……」
「お前、どのツラ下げてステージ立ってんだァ!」
ステージの最前列、警護という名のヤジを飛ばしていたのは、真選組の面々だった。
土方が血管をピクつかせながら叫べば、沖田はバズーカを肩に担いで不敵に笑う。
「土方さん。歌声云々の前に、江戸を乱した罪で処刑した方がいい。……特に真ん中のメガネ、お前の歌は酷かったぜィ」
「これでも、一生懸命歌ったんですよ!」
「うるさいネ! 芸術が分からん税金泥棒は黙ってろアル! 」
そんな時、ステージの袖から美しい着物を纏ったが静かに姿を現した。
先日のスナックでの騒動の際、真選組の面々は遠目からその姿を認めてはいたが、至近距離で彼女を直視するのは初めてだった。