第1章 【脹相】新月
「脹相、温かいですね」
は体を捩って背中を更に密着させてきた。
本当は寒さを我慢していたようだ。
「術式の応用だ」
「便利ですね」
「寒いのは…辛いからな」
「そうですね」
脹相が思い出すのは産まれ堕ちた時から入れられていた容器の中。
耐え難い寒さの中、弟たちと励まし合った150年間。
にはそんな思いはさせまいとに回す腕にも力が入る。
「術式を使っている時は鼓動が激しくなるものなのですか?」
「…」
自分の鼓動が速くなっていることは脹相自身も認識している。
こんなに体が密着しているのだ、もちろんにだって背中越しにわかってしまっているだろう。
きっと単純に術式が体に負担をかけているのではないかと心配しているだけの発言だと思われる。
その証拠に脹相が理由を言い淀んでも「?」と不思議に思っている程度の反応だ。
「これは術式の副次的効果ではない。…に、触れているからだ」
の体に再び力が入るのを感じた。
(…失言だっただろうか?)
そう思った次の瞬間、は脹相の右手を取った。
そして自らの首元に脹相の指先を当てた。
頸動脈が強く速く脈打っている。
「…私のも術式の副次的効果じゃありません」
少しふざけたように言うは今どんな表情をしているのだろう。
それを見れない新月であることが口惜しい。
「フッ、に術式などないだろう?」
「ふふっ、そうでした」
脹相の脳裏にはイタズラっぽく微笑むが見える。
(あぁ、俺は…)
『でもさ、大切なことって口に出して言わなきゃ伝わらんよ?』
今朝の虎杖の言葉が頭を過ぎる。
そして、自然と口が動いていた。
「…、好きだ」