• テキストサイズ

白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第26章 ● 敗北の夜 ○


 星歌の瞳に、困惑と恐怖の色が浮かんでいる。
「…精次さん…?」
 緒方の理性はもう糸のように細くなっている。こんなことはダメだ、そう思いながらも止めることはできない。深く唇を重ねながら、ニット越しに星歌の体に触れる。その体は想像以上に柔らかく華奢で、あたたかい。布越しでも伝わる女性らしい曲線に、頭の奥が真っ白になる。震える手でニットをたくし上げ、素肌に直接触れた瞬間、息が詰まった。星歌が小さく身をよじる。
「…ダメ…精次さん…」
 嫌がる声色、抵抗の言葉。それが逆に火をつける。緒方は唇を鎖骨へ滑らせ、スカートの中に手を潜り込ませた。太腿の内側にそっと触れ、なめらかな感触を味わう。その肌は小刻みに震えているが、それすらも緒方の本能を刺激するエッセンスにしかならない。だが、すぐに星歌の啜り泣きが耳に届いた。
「…こんなの…ヤダ…」
 緒方は手を止めた。指先が、星歌の震える膝の上で凍りついたように固まる。オレは、なんてことを…。酒の熱と欲望、負けた悔しさ、全てが一瞬で吹き飛んだ。
 ゆっくりと体を離し、星歌の横に崩れるように倒れこんだ。
「…すまない…」
 掠れた小さな謝罪が、暗い部屋にポツリと落ちる。
 星歌は涙を拭うように手の甲で目元を押さえ、震える息を整えてから小さく呟く。
「…ちゃんと寝てね」
 それだけを残してベッドから起き上がり、乱れた服を直しながら逃げるように部屋を出た。数秒後、玄関のドアが静かに閉まる音が聞こえた。
「…星歌…」
 緒方は、泥のように酔った頭で呼びかけるが、体は動かない。ベッドに横たわったまま、天井がグルグルと回る。…オレは…最低だ…。星歌の啜り泣きが、耳に残って離れない。追いかけたい。抱きしめて、もう一度謝りたい。
 でも、酒と疲労と自分の愚かさに、体が鉛のように重い。ゆっくりとまぶたが落ちる。意識が深い闇に沈んでいくようだった。
/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp