第2章 しゃけ大根に溶ける貴方の心 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
桜が舞い散る季節が過ぎ、新緑が眩しくなり始めた頃。
義勇の屋敷に、小さな、けれど確かな「命」の灯火が宿った。
痣の者は二十五歳までしか生きられない――。
その残酷な宿命を承知の上で、二人は共に歩むことを決めた。
残された時間は、普通の夫婦よりずっと短いのかもしれない。
だからこそ、その一日一日は、呼吸をするのを忘れるほどに愛おしいものだった。
「……義勇さんにお知らせがあります」
夕餉を終えた後の、穏やかな時間。
がどこか緊張した、それでいて幸福感に満ちた表情で義勇の前に座り直した。
「……どうした、。どこか体が悪いのか?」
義勇はすぐに心配そうな顔をして、の顔を覗き込む。
「いいえ。……私のお腹の中に、新しい命が宿りました。……私と義勇さんの子です」
「…………」
義勇は、持っていた湯呑みを置くのも忘れ、目を見開いたまま固まった。
沈黙が流れる。
は、彼が「痣を持つ自分の子供」であることを不安に思うのではないかと、少しだけ胸を痛めた。
「……義勇さん?」
「……俺の、子供か。……俺と、お前の……」
義勇の大きな手が、震えながらのまだ平らなお腹に、そっと触れた。
その指先は、まるで壊れ物を扱うように繊細で、温かかった。
「……ああ。……そうか。……命が、繋がっていくのか……」
義勇はをそっと引き寄せ、その肩に顔を埋めた。
彼の体温を感じながら、は静かに語りかける。
「義勇さん……分かっています。私たちが一緒にいられる時間は、もしかしたら……短いのかもしれません。でも、この子は、義勇さんが生きた証です。私が、この子が……貴方の生きた軌跡を、ずっと語り継いでいきますから」
「……」
義勇は顔を上げ、潤んだ瞳で妻を見つめた。
「……怖くないと言えば、嘘になる。……お前とこの子を置いて逝くのが、たまらなく惜しい。……もっと、長く、……せめてこの子が大きくなるまで、見ていたかった」
「義勇さん……」
「だが……今は、感謝したい。……俺のような男に、こんな幸せを遺させてくれた神に。……お前に出会えて、本当によかった」