第11章 純白の境界線 【ヒロアカ 爆豪vs轟vs相澤】
三月の風はまだ冷たいが、日差しには確かな春の気配が混じっていた。
雄英高校卒業を目前に控えた休日。
爆豪は馴染んできた右腕のサポーターを軽く弄りながら、駅前の雑踏を歩いていた。
全面戦争から二年。
失いかけた機能はクソ忌々しいほど長く、泥臭いリハビリの末にようやく「戦える」レベルまで戻ってきている。
「……あ?」
不快な金属音が響いたのは、その直後だった。
歩道橋の向こう側、工事現場の資材が派手に宙を舞う。逃げ惑う群衆の悲鳴。
「ったく、休みの日くらい大人しくしてやがれクソヴィランが……!」
爆豪が地を蹴ったのと、逆方向から氷の道が伸びてきたのはほぼ同時だった。
「爆豪か。奇遇だな」
「……チッ、お前かよ」
爆豪の爆破で姿勢を崩したヴィランを、轟の氷結が容赦なく縫い留める。
二人の連携は、もはや言葉を介さずとも完成されていた。
卒業を控えたA組のツートップにとって、この程度の騒動は「日常」の延長線上に過ぎない。
だが、拘束されたヴィランが、悪あがきに指先を二人へ向けた。
「……愛の、試練を……ッ!」
紫色の煙のような発光が、爆豪と轟を包み込む。
回避する間もなかった。
身体に痛みはない。
だが、妙な倦怠感が一瞬だけ二人を襲った。
「おい、今の……」
「……個性か。だが、どこも異常はないようだが」
その後、駆けつけた警察にヴィランを引き渡し、二人はその場で事情聴取と個性の鑑定を受けることになった。
数分後、警察に帯同していた鑑定系の個性を持つヒーローが、困ったような、それでいて同情を禁じ得ないような顔で戻ってきた。
「……えー、結論から言うと。君たちにかかったのは『運命のハプニング』という個性だ」
「あ? なんだそのふざけた名前は」
「……効果は?」
轟の問いに、鑑定ヒーローは頬を掻きながら答えた。
「……『好きな人』が近くにいる場合、不可抗力でラッキースケベが発生する。……というものだ」
「……は?」
爆豪の短い声が、静かな通りに響いた。