第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
石のように固まっていた轟の瞳に、激しい怒りの熱が宿った。
画面の中で無様に蹂躙され、卑猥な言葉を吐かされている。
だが、今の彼女は過呼吸気味に肩を震わせて泣いている。
その姿を見れば、これまでの出来事が彼女の本意であるはずがないことなど、火を見るより明らかだった。
「……っ、ふざけるな」
低く、地を這うような声。
次の瞬間、轟の右足がアスファルトを叩いた。
「ひっ……!?」
悲鳴を上げる暇もなかった。
爆発的に広がった氷壁が、嘲笑っていた女子生徒たちの足元から這い上がり、一瞬にして彼女たちの首から下を冷たい檻の中に閉じ込めた。
「よこせ」
轟は、凍りついて動けない女子生徒の手から、奪い取るようにスマホを引ったくった。
さらに、周囲にいた他の取り巻きたちにも、氷炎を孕んだ眼光を向ける。
「他にある分も、全部出せ。……さもなければ、次は首から上を凍らせる」
死神のような威圧感に、女子生徒たちは震え上がる指でバッグから端末を差し出した。
轟はそれらすべてを回収すると、容赦のない衝撃を与えて全員の意識を刈り取り、その場に沈めた。
静寂が訪れた校門前。
一瞬の出来事に呆然と目を見開くの元へ、轟は歩み寄った。
「焦凍、くん……」
「……悪い。気づくのが遅すぎた」
轟は、自分の体を抱きしめていたを強く抱きしめた。
彼女の首筋には無数の鬱血した痕が残っている。
「嫌、見ないで……私、もう、ぐちゃぐちゃに汚されて……」
「関係ねぇ。お前がどんな目に遭わされたとしても、俺がお前を離す理由にはならねぇ」
耳元で囁かれる、変わらぬ低い声。
「……殺してやりてぇよ」
を腕の中に閉じ込めたまま、轟は氷のように冷たい声で吐き捨てた。
視線の先には氷漬けにされ、意識を失ったまま無様に晒されている女子生徒たち。
そして、奪い取ったスマートフォンの中には、彼女を玩具のように弄んだ男たちの顔が、克明に記録されている。
ヒーローを目指す者として、一線を超えることは許されない。
だが、今の轟の胸中で渦巻いているのは、正義感などという綺麗なものではなく、愛する者を踏みにじられた、どす黒い破壊衝動だった。