第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
静まり返った部屋に、二人の荒い呼吸だけが重なり合う。
轟は後ろからを包み込むように抱き寄せ、そのまま柔らかいベッドへと沈み込んだ。
シーツに散った彼女の髪に顔を埋め、まだ熱い吐息をその項に吹きかける。
「……ごめんね、焦凍くん。私、痛がっちゃって……最後までできなかった」
が消え入りそうな声で謝った。
彼を満足させられなかった申し訳なさが、胸の奥をチクリと刺す。
「気にするな。お前は初めてなんだし、当然だ」
轟の太い腕が、彼女の細い腰をさらに強く引き寄せた。
「お前を壊したくねぇんだ。少しずつ慣れていけばいい」
「……うん」
返事をしながらも、の胸中には別のモヤモヤが広がっていた。
さっきの、熱情に任せたようでいて的確に自分を追い詰めていった指使い。
蕩けるようなキス。
(焦凍くん……あんなに凄かったのに。本当に、私だけなのかな)
自分は彼のことばかり考えていた十年間だったが、彼は「No.2の息子の轟焦凍」だ。
周囲には可愛い女の子もたくさんいるはずだ。
「……どうした。顔、暗いぞ」
覗き込んできた轟の瞳に、は迷いながらも正直な気持ちを零した。
「あのね……焦凍くん、すごく慣れてる感じがしたから。……焦凍くんは初めてじゃなかったのかなって……思っちゃって」
言い終わるか終わらないかのうちに、轟が呆気に取られたような顔をした。
そして、次の瞬間には耳まで赤くしてふいと視線を逸らす。
「……バカ言え。俺にそんな相手がいるわけねぇだろ」
「でも、あの……すごく、気持ちよくしてくれたし……」
「それは……お前に会えない間、ずっとお前のこと考えてたからだ。どうすればお前が喜ぶか、想像……してたから。……それと、今朝の夢のおかげだ」
「……夢?」
「……気にするな。とにかく、俺の『初めて』はお前が全部だよ。キスも、……その、さっき出したやつも」
轟は気恥ずかしさを隠すように、彼女の首筋に頭を押し付けた。