禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第4章 爆殺神の彼は彼女を拾う 【ヒロアカ 爆豪勝己】
「……おい、足元見て歩け。浮ついてっと転ぶぞ」
岩場の続く険しい登山道。
次のオフの日、爆豪は大きなザックを背負いながらも、後ろを歩くいのりのペースを常に気に掛けていた。
彼女を、あえてこの厳しい山へ連れてきたのには理由がある。
自分の力で困難を乗り越え、絶景を掴み取るという「達成感」を、彼女に教えたかったのだ。
「はぁ、はぁ……っ。……うん、大丈夫。勝己くんの背中、見てるから……」
いのりは、慣れない登山靴で懸命に地面を噛み締める。
空気は薄く、足は鉛のように重い。
けれど、一歩進むたびに視界が開け、下界のすべてが小さくなっていく。
直哉に閉じ込められていたあの狭い部屋も、自分を汚そうとした男たちの視線も、今は雲の向こう側だ。
数時間後。ついに辿り着いた山頂。
そこには、遮るもののない360度のパノラマが広がっていた。
「……っ、わあぁ……!」
いのりは言を失い、その場に立ち尽くした。
足元に広がる雲海、どこまでも深く澄んだ空。
「……見たか。これが、テメーが今立ってる場所だ」
爆豪が隣に立ち、彼女と同じ景色を見つめる。
「勝己くん……私、自分の足で、こんなに遠くまで来れたんだね」
「俺が一緒にいるんだ……どこまでだって行けるっつーの」
「……本当に綺麗。……私、ここに来られてよかった」
いのりが潤んだ瞳で景色を見つめる。
その横顔には、かつての痛々しい悲壮感など微塵もない。
爆豪は彼女を背後から包み込むように抱き寄せ、その細い肩に顎を乗せた。
「……いのり。下界にいたクソ共のことは、全部あの雲の下に置いてけ。ここには、俺とお前しかいねぇ」
その言葉は、どんな甘い愛の囁きよりも深く彼女の心に染み渡った。
家柄や過去に縛られ、誰かの所有物でしかなかった彼女が「自分自身の力で自由を掴み取った」と感じた瞬間だった。
「……何度だって俺が上書きしてやる。テメーの記憶も、身体も、全部だ」
爆豪の胸の鼓動が、背中越しに力強く伝わってくる。
「……うん。……私、爆豪くんの隣で、ずっと生きていたい」
「当たり前だ。……一生、俺の隣で笑ってろ」
この雲上の聖域で結ばれた二人の絆を、切り裂けるものなどもう存在しない。
黄金の光に包まれながら、二人は寄り添い、無限に続く未来をじっと見据えていたーー。
