禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
スフィンクスの島の浜辺。
潮風に吹かれながら、いのりはまだおぼつかない足取りの、赤子のエースの手を引いて歩いていた。
「あ……ぅ、あー……!」
ふと、エースが小さな指を空へと向け、舌足らずな声を上げる。
その視線の先、黄金色の空から一条の青い炎が舞い降りてきた。
「……っ、マルコさん!」
マルコは砂を蹴って着地すると、すぐさま駆け寄り、震える身体でいのりと赤子のエースをまとめて抱きしめた。
「……ただいま。すまねェ、寂しい思いをさせたな」
「マルコさん……! 無事で、無事で本当によかった……っ」
いのりはマルコの胸に顔を埋め、声を上げて泣いた。
マルコは彼女の背中を愛おしそうになぞり、それから自分の衣を掴んで不思議そうに見上げている我が子へと視線を落とした。
「エース、ただいまだよい。……お前、少し大きくなったか?」
「だ……ぅ、んーっ!」
まだ言葉にならない声を上げながら、エースが小さな手でマルコの頬をぺちぺちと叩く。
マルコは膝をつき、大きく膨らんだいのりのお腹に、耳をそっと当てる。
「……二人目も、ちゃんと待っててくれたんだな。約束、守ったぞ」
「はい……毎日、この子と一緒にマルコさんの無事を祈っていました」
それから。
白ひげ海賊団の残党たちがそれぞれの道を歩む中、マルコは「不死鳥」の名を仕舞い込み、島唯一の医者として土に根を下ろした。
夜、子供たちが眠りについたあとの静かな寝室。
マルコはいのりを背後から包み込むように抱き寄せ、首筋に深く、慈しむような口付けを落とす。
「ん……マルコ、さん……」
「……あァ。あんたのこの匂いを嗅ぐと、ようやく帰ってきたんだって実感が湧くよい。……愛してるよ、いのり」
かつて他者に汚され、絶望の淵にいた彼女。
けれど今、マルコの腕の中で幸せそうに目を細める彼女に、あの日の影はもうどこにもない。
マルコが注ぎ続けた深く熱い愛が、彼女の心も、身体も、すべてを優しく書き換えたのだ。
窓の外では、親父が愛した故郷の穏やかな海が、二人を見守るように凪いでいる。
繋がれた小さな命と、隣にいる最愛の女性。
多くのモノを失った不死鳥は、最後に新しい『家族』を手に入れたのだったーー。