第10章 未完のラブレター
アキが結那に投げたかったのは、雪玉でなかった。
アキ自身の心だった。
その心を受け取って欲しかったのだ。
デンジの身体に寄りかかり、ただ愛しい者の名を呼んでいる。
そのアキの声をデンジは、呆然と聞いていた。
「結那…結那……」
伝えたかった想いは溶けて…消えてしまった。
何度も呼んだ名前。
その名を呼んで確かめたかった。
確かにそこに在ることを__
アキの口からはもう、音など出ていなかった。
それでもアキは呼び続ける。
細川結那――それは、早川アキが本当に愛していた、女の名前__。