第8章 百鬼夜行の、その最中※
しばらくして。
恵くんは繋がっていた部分から名残惜しそうに自分のモノを引き抜くと、付いていた薄い膜を手早く外して結び、ゴミ箱へ静かに落とした。
「……はぁ、……っ」
熱い息を漏らした恵くんは、その後力なく横たわる私の頬に手を添え、壊れ物を扱うような優しさで再び唇を重ねてくれた。
さっきまでの激しさが嘘のように優しくて、普段言葉にしない想いをすべて溶かし込んだような、甘い口づけだった。
「んっ……ぅ」
「ん……っは、」
幸せだった。
この幸せのためなら、何だって差し出せるくらい。
これからもずっと、恵くんの傍で生きていきたい。
恵くんと将来を誓いあって、子供ができたら二人で沢山可愛がって、幸せな家族になるの。
津美紀ちゃんにも、五条さんにも、「おめでとう」って祝福されて、二人にたくさん「ありがとう」って伝えたい。
今この瞬間があるのは、紛れもなくあの二人のおかげなのだから。
「……愛してる」
「っ、」
唐突に放たれたその一言が、鼓膜を通り、すとんと胸の奥に落ちた。
普段、素直に感情を言葉にしない恵くんが、掠れた声で紡いだ愛の告白。
驚きで目を見開いた私の視界が、じわりと熱いもので滲んでいく。
「……だから、傍にいてくれ」
恵くんはそう言うと、私の額に自分の額をこつんと預けた。
重なり合う視線の先にある恵くんの瞳には、迷いなんて微塵もなくて。
逸らすことなく私を見つめるその黒い瞳が、静かに、でも確かに私を選んでくれていた。
「……うん。…ずっとずっと、離さないでね……っ」
「………泣くなよ」
怒ったように眉に皺を寄せた恵くんが、私の目尻に溜まった涙を優しく拭う。
その仕草があまりにも愛おしくて、首に腕を回し引き寄せると、どちらからともなく再び唇が重なった。
窓の外では、夜の終わりを告げるように、遠くで鳥の声が微かに響き始めている。
────もう、怖いことなんてない。
この幸せを守るために、私は呪術師であり続ける。
そんな覚悟を胸に、私は恵くんの腕の中で心地よい微睡みに身を委ねていった。