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【刀剣乱舞】顔が好き【R18/BL】

第8章 信じてほしいなんて


「…あるよ」
 気怠げな声が割り込んだ。

 一瞬、何が起きたのかわからなかった。

 部屋の入口に肥前が立っていた。……いつから電話を聞いていたのか。

「肥前……?」
 思わず怪訝な声が出てしまう。

 肥前は顎で端末を示した。慌ててスピーカーモードに変える。

「おれが体調を見て、事務仕事と顕現のペースを調整した」
 淡々と彼は続ける。

「霊力の消耗が激しい状態で無理させりゃ、いずれ本丸が回らなくなるからねぇ。書類だって期限を破ったりしてるわけじゃない。効率の問題だ」
 電話の向こうが、静かになる。

「……文句あるか?」
 一瞬、息が止まった。

『……』
 数秒の沈黙。
『状況は把握した。経過観察とする』
 通話は、それだけで切れてしまった。

 端末の画面が暗くなる。

 部屋の中に、朝の静けさが戻ってくる。

「……」
 言葉が、出てこなかった。

「なんで……?」
 やっと出た声は、我ながら笑ってしまうくらい間抜けなものだった。

「……別に深い意味はねぇよ。
監視役として、必要な判断をしただけだ」

 久しぶり、だった。

 誰かに庇ってもらうなんて。

 いつも、期待されて、がっかりされて、苦笑されて、怒られてばかりだったから。

 「あ!あと、朝飯ちゃんと食いに来いよ」となんでもないことのようにそう言って、ひらりと手を振り、彼は背を向ける。


 庇われる資格なんて、自分にはないと思っていた。信じてもらったり、守られたりするなんて、夢のまた夢。


 あんな言い合いをしたばかりなのに。肥前は何事もなかったように部屋を出ていく。

 
 ずるずると椅子に背を預けたまま、俺は動けずにいた。

 胸の奥が、じんわりと熱い。

『何を斬るかは、おれ自身が決める』
『…文句あるか?』

 信じて、もらえたのかな。

 ……顔の火照りが引くまで。今はこうして、一人で居させてください、神様。
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