第4章 ぐらぐら
ふと、規則的だったすぐそばの呼吸が変わった。寝息のリズムがわずかに乱れて、長い睫毛が震える。
私はなぜか反射的に布団の中へ引っ込んだ。
別にただ寝顔を眺めていただけで悪いことをしていたわけじゃないけれど、なんだか隠れないといけない気がした。
「……ん」
寝起きの、低く掠れた声が漏れる。
椅子の軋む音と伸びをしているのか布の擦れる音がする。
次いで、こちらを覗き込む気配。
心臓の音がやけに大きい。狸寝入りというのは意外と緊張するものだったらしい。
「……おい」
ふと、軽く、布団の上からぽんと体を叩かれた。
「起きてるだろ」
「……バレちゃった」
観念して顔を出すと、鶴丸は少しだけ口角を上げていた。
「俺が起きた瞬間に引っ込んだの、見えてたぜ」
「……まじ?」
なんだか安心して笑いながらそう聞くと、鶴丸は肩をすくめた。
「まじだよ、大まじ」
「まじかぁ……てか、首大丈夫?」
ずっと気になっていた首の心配をしてみる。
「……そういえばちょっと痛いな……」
「絶対寝違えてると思った!」
「そりゃこんな姿勢で寝たらなぁ……」
「椅子は寝る場所じゃないよ」
「……そんなことは知ってる」
少し拗ねたような声音。それが妙に子どもっぽくて、可笑しくなる。笑みが溢れてしまう。
幸せな朝だ。そう思った。