第61章 ゲリエール
そんなふうに思いながら、私もグラスを傾ける。不思議な香りのするカクテルだ。先程よりもアルコールは感じない。喉を爽やかに落ちていき、身体が中から熱くなるような感じがする。ふわりとした浮遊感が一瞬私を襲う。
あれ?・・・なに?
そう思った時、眼の前がくるくると回り始めた。
心地よい浮遊感にも、めまいにもにたその感覚に私は戸惑う。
薬を盛られた?
そう気づいたときには遅かった。手も足も、自由が効かなくなっていく。
かろうじて彼の、デュークの声が聞こえる。
「効いてきましたか?『悪魔の眠り』(ソメイユ・デモニアック)・・・さあ、楽しみましょう。ここはバル・マスケ・・・欲望を、真の自分をさらけ出すところ。私とリュネールで、貴女のその心の鎧、全部引き剥がして差し上げますよ・・・」
ふふふふふ・・・・
ふふふふふ・・・・
不思議なことに、笑い声は男性のものと、そして、女性のものが混じり合っていた。
その声も歪んで、滲んで・・・そして闇に消えていく。
私の意識も、くるくると闇に飲みこまれていった。