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淫夢売ります

第56章   違う電車


注文を終えると、やっと気持ちがホッとした。
先程見た夢の妙な余韻が消えるといいな、そう思っていた。

しばらくして運ばれてきたサラダもパスタはとても満足がいくものだった。

美味しい・・・。

ペスカトーレを食べながら、思い出すのは、ここを教えてくれたイラストレーターの武内さんのことだった。

仕事の話はすぐに終わってしまう。ミーティングの時間のあまりはコーヒーなどを飲みながらの単なる雑談になることが多かった。たまに、恋愛の話にもなったりする。

彼女は割と学生時代から多感な方で、男友達もたくさんいたようだった。私が小学校からずっと女子校で、大学でもお付き合いひとつしたことがないと聞いて、本当に目を丸くして驚いていたのを覚えている。

『え?男の人が怖いとか?』

なんて聞いてきた。『もしかして、女の子が好き・・・とか?』とも。
もちろん、両方とも私は否定した。別に男性が怖いわけではないけれども、どう付き合っていいかわからない、みたいなことを言ったら、ふーん、とちょっと考えるような仕草をした。

ああ、そう言えば不思議なことを言っていたな・・・

『夢占いって信じる?』

彼女が言うには新宿によく当たる占いやさんがある、というのだ。そして、ちょっと不思議な、いたずらっぽい笑みを浮かべて『時子さんも行ってみたら・・・新しい発見があるかも、よ?』と言っていた。

たしか、そのお店って、このパスタやさんの近くだった気が・・・

手帳を取り出してめくってみる。特に行く気があったわけではないけれども、クライアントへの話題提供か何かで役に立つかしらと思ってメモっておいたのだ。

食後の珈琲を飲みながら、スマートフォンで調べてみると、このお店から200メートルほどしか離れていない。たしかに駅への道とは反対だけど・・・

ちらりと時計を見た。金曜の夜、まだまだ電車は混んでいそうな時間帯だった。あまり遅くなると雨が降り出すかもしれないなと思うけど、雨が降ってしまったほうが電車が空いてるかもしれない、そんな思いもあった。

どうしようかな・・・
帰ろうか、もう少し、時間を潰そうか・・・?

幸いなことに、明日は土曜日で会社は休みだ。少しくらい帰るのが遅くなっても構わないはずだ。このときの私は、そう思った。
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