第9章 あふれる想い
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ピピピピピ・・・
目覚ましが鳴る。薄っすらと目を開けると、見慣れた天井。
夢?
そう、夢だ・・・。体を起こして、まじまじと手足を見る。胸に触り、髪の毛をなぜる。
全部、いつもの自分だ。
女性である、東野蓮。
未だ鳴り続けている目覚ましを止め、枕の下のカードを手に取る。
『短い髪の女性にキスをする人』
短い髪の女性はちーちゃん
ナイトのような人は私
このカードがもたらした夢。甘い、甘い、夢。
それが夢であることが痛いくらいに胸を差す。
涙が溢れる。
楽しく、語り合った将来。
交わった身体。
感じた体温。
全部、この世界にはない。
夢の中だけ。
それは、夢を見る前よりも、何百倍も残酷な事実だった。
耐えきれず、私は嗚咽する。いつまでも、いつまでも、胸の痛みは消えなかった。