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淫夢売ります

第35章   蕾の味


☆☆☆
裏新宿、番地はここであっている。

「Oniromancie Morphée」

という木の札がかかっている。夢占モルフェ・・・来てしまった。
金橋の言うことを真に受けた訳では無いが、確かに茉莉との仲を進展させたいという気持ちがある。占いしかしてくれなかったとしても、それはそれで役に立つかもしれない、などと自分を説得した結果だった。

重そうな木の扉を開くと、軽やかな鈴の音が響く。店の中はひんやりとしている。秋も深まってきているこの季節、中の人は寒くないのだろうか?

暗い店内には黒いビロードの膜が幾重にも垂れ下がり、銀色の星や月のオブジェがチラチラと薄暗い照明に瞬いていた。

「いらっしゃいませ・・・そのまま奥にどうぞ」
金橋が言う通り、ここの主人は女性のようだ。よく通る硬質なガラスを思わせる声が奥から聴こえた。

店に入って少し奥にもう一枚暗幕のようなものがあるのがわかった。ここをめくるのか?

そっと中を覗くと、柔らかそうな素材の黒いクロスをかけた机を前に、この季節にはあまりそぐわないような薄手の黒いワンピースを着た女性が座っていた。

黒い背中くらいまであるロングヘアは、絹のような光沢を帯びていた。肌は白く、唇だけが赤いので、何やらどきりとしてしまう。

少し長めの爪は血のように赤く色づけられていた。
そして、何より彼女の印象を決定づけるのは、その目だった。

黒い。この黒をどう表現したらいいのだろう。
濡れた黒曜石のような、人の目としてはありえないような黒、に見える。この店の薄暗さのせいかもしれないが、すべての光を吸収してしまっているのではないかと錯覚するような深い黒だった。

その目が僕をじっと見つめる。

「はじめましてユメノと申します。・・・今日は、どのようなご要件でしょうか?」

「夢を・・・買えると聞いたので」
言った瞬間、彼女の目が、三日月に歪んだように見えたのは、錯覚だろうか?
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