第30章 沈む海
高い天井の何処かに明り取りの窓があるようだ。広間には月光の青がいくつも落ちていた。その広間の中央まで来て、あたりを見回していると、突然後ろから声をかけられた。
「おかえりなさいませ。真人さま。」
びっくりして振り返った所にいたのは、肌が透ける青いドレスを着た女性だった。青いドレスが、キラキラと月明かりを照り返している。
女性は肩を越す黒髪と、少し大きな印象的な目をしていた。両の腕はこの薄暗がりでもわかるほど、抜けるように白かった。
女性がそっとかしずく。
「澪です」
立ち上がると、ふわりと僕に抱きついて、キスをしてきた。ふんわりとやわらなか唇が押し付けられてくる。そのまま澪に手を取られ、導かれるがままに古城の二階に上がった。大きな扉を開くと、天蓋がついた大きな寝所がある。
そこに、澪が腰を掛け、僕の方を見た。怯えたような、乞うような、不思議な揺れる瞳だった。するりと青い衣を脱ぐ。窓から入る月明かりが、澪の肌を青く染め上げた。
何をするべきか、何も言われなくても、僕には分かっていた。