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天狐あやかし秘譚

第82章 危急存亡(ききゅうそんぼう)


とにかく、自分の使命はこの妙な狐男を見続けること・・・
そう考えているようだった。

1分ほど、本殿を見上げると、ダリはその前扉、神社で言えば御神体が安置されているだろう箇所の両開きの戸に手を掛ける。特に鍵はかかっていないらしく、それらはあっさりと開いた。

中はがらんとした木造りの部屋のようであるが、京本を囲む狐火の光も中までは届かないため、そこに何があるかをうかがい知ることはできなかった。特に危険を感じることもなかったので、興味半分でそこに近づいていく。

ダリが本殿の中に入り込んだところで、京本がその扉辺りまでくる。そこまで来ると、狐火の光で部屋の中が薄ぼんやりと照らし出されていく。そこは予想通りの木造りの部屋で、左右には古くて小さな社にありがちな格子の明り取り用の窓がある。古い建物であるようだが、奥側の壁際にこそ何かがバラバラと散らばっているようだったが、全体的には小綺麗だった。

中央には簡素な祭壇のようなものがあり、三方(注:木で作られた神饌を乗せる台)の上に方形の布がかけられており、その上に勾玉がひとつ置かれている。

勾玉はくすんだ緑色をしており、おそらく翡翠製だろうと思われた。大きさは5センチ弱と言ったところか、珍しいものなのだろうけど、博物館などで見られるような普通の作りだった。

ダリがそっと、その玉に手を伸ばす。取ろうとして一瞬躊躇する。何事かをつぶやき、再び手を伸ばした。ダリが勾玉を掴むと不思議なことに、その玉が色合いを変える。緑の色合いが薄くなり、オレンジ色がかり、しかも光を放ち始めた。よく見ると、全体的にはオレンジなのだが、その中に黒い色の模様がウネウネと蠢くように漂っていた。

「そ・・・それが・・・狙っていたお宝かい?マカルガエシノタマ・・・とかいう」
そのあまりに神秘的な変化に、京本も息を呑んだ。明らかに普通のものではないこれこそが、自分が持ってくるように言われたものだと確信したようだった。

「ああ・・・そうだ」
「じゃあ、それを早くよこせ」

京本は左ポケットから金属製の筒を取り出して、無遠慮にその右手をダリに突き出した。その手にある死返玉を渡すように要求したのだ。
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