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天狐あやかし秘譚

第64章 家徒四壁(かとしへき)


☆☆☆
「まま!」
清香ちゃんが駆け寄ってきて、ぼーんと私に抱きついてくる。隣ではまったく同じようにみゆきちゃんが清美さんに抱きついていた。ふたりとも超かわいい。

児童プラザのゲームスペースで芝三郎と三人で大人しく遊んでいてくれたようだった。ダリは椅子に腰掛けて、三人を見てくれていた。一緒に遊ぶのは彼にとってはかなりハードルが高いのだろう。それでも、見ててくれるだけでも大助かりだ。

この時点で、時間は19時30分だった。20時が閉館時間なので、そろそろ出る準備をしなければならない。清美さんたちのことはとても心配だが、これ以上はちょっとできることはなさそうだった。

あ・・・でも・・・。

「清美さん、夕飯って・・・」
そう、財布を探しに出てしまったので、清美さんは夕飯を食べていない。このまま帰ったら財布をなくしている以上、彼女は食べられないのではないか。

「だ・・・大丈夫です」

予想通りそう言うが、目が泳いでおり、その発言が嘘であることを如実に告げた。

「私も食べそこねちゃったんです。どうですか?うちに来ませんか?
 昨日の残り物とかで良ければ、私と一緒に食べません?」
「そ・・・それは・・・」

遠慮しようとした矢先、ぐぐーっと清美さんのお腹が鳴る。ついでにタイミングよく私のお腹も鳴った。

「お互い、お腹空いてますし、ね?」
ウィンクすると、清美さんはこくりと頷いてくれた。

「おい、綾音」
ダリが声をかけてくる。まさか、あなた、うちに呼ぶなとかケチなこと言わないわよね?

「そうと決まれば、さ、準備して」
「綾音よ」
だから!この人、困ってるんだってばさ!近所だし、泊まってくわけじゃないんだから!!

「綾音・・・ちょっとこっちに」
クイッとダリに手を引かれる。それを見て、清美さんが不安そうな顔をする。そりゃそうだ。清美さんが私とダリをどういう関係と見ているかわからないが、同居人が反対していると思ったら遠慮するのは確かだ。

「ちょっと、ダリ、なんだって言うのよ!」
少し離れたところに行き、小声で言う。
「あれを見よ、綾音」
クイッとダリが顎で示す方を見る。
あれ?・・・あれは・・・。
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