第61章 辺幅修飾(へんぷくしゅうしょく)
やっぱり、帰ろうか。
会うべき人には会った、と思えたからだ。
小さく嘆息したとき、島本の足元に、ちょろっと黒い影が蠢くのが見えた。
一瞬ネズミかと思った。だが、他の人が騒いでない。ネズミが会場を駆け回っていたらもっと大きな騒ぎになるだろう。
なんだ?
黒い影はちょろちょろと島本の足にまとわりつくように走っていた。集中すると、ほんのり邪気が見えた。そして、他の人が全くそれに注意を払っていないところからも、それが厭魅、妖怪の類だと知れる。
その影は島本の足を駆け上がり肩まで一気に登っていった。肩口に乗ると、静止し、こちらをじっと見てきた。どうやら、向こうも私に気づいたようだ。
耳が尖り、鼻面が出ている、子ねずみほどの大きさの黒い獣・・・。
ーなんてことだ。あれは・・・管狐(くだぎつね)だ
それは、誰かが島本を悪意を持って呪っていることを示していた。