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天狐あやかし秘譚

第59章 淫祠邪教(いんしじゃきょう)


もちろん、これは外法だ。

高重が外法を使い、疱瘡神を配下においたことは、すぐに陰陽寮の知るところになる。そして、当時の陰陽頭は、当然のごとく、この行為を許さず、名越高重を陰陽寮から除名し、その一族の抹殺を命じたのだ。

当時の陰陽寮の名越の一族との戦いは激烈を極めたそうだ。しかし、疱瘡神の神力を自在に操ることが出来た高重は、陰陽寮総出の追跡を振り切り、まんまと都から逃げおおせたのである。そして、そのまま行方をくらまし、ひっそりと島根の地に住み着いた。

その地で高重は、手に入れた疱瘡神の神力を、自分の子や孫、子々孫々まで伝え、一族の繁栄の基盤をつくりあげようと画策した。そのための悪魔の手段が、代々疱瘡神を女児に引き継ぎ続ける『本家』とそれを守る『中神村』、そして、本家からの神力を吸い上げ、繁栄をし続ける『四分家』の創設だったのだ。

高重は、疱瘡神を抱えた女児を『名越本家』としてひとつの村に囲い込んだ。これは、都からの追っ手の目をくらませるカモフラージュの役割を果たすとともに、名越本家から『子』を逃さないための自治の制度を敷くためのものだった。この『本家』の、女児に対して、四つの分家から順番に男子を遣わし、『夫』とする。夫の役割は、妻である『疱瘡神憑きの女』の監視と管理、女から神力を吸い上げ四分家に分け与えること、そして、妻に女児を産ませ、次の疱瘡神の器を用意すること、だった。

『本家』とは名ばかりである。そして、『夫』とは、体の良い奴隷であった。それが証拠に、四分家から順番に送り込まれる『夫』は、家の中で最も『出来の悪い』男が選ばれ、その任にあてがわれていた。

『妻』が『子』を産めば、疱瘡神は『子』に移る。本来、疱瘡神が抜けた『妻』は用済みの存在である。しかし、次世代の『疱瘡神憑き』の女児が家のあり方に疑問を抱いたり、反旗を翻さないように、これを『当主』として奉っていくことになる。

こうして偽りの家系『名越家』は『四分家』に神力を供給し、それを栄えさせるための『贄』として機能し続けた。
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