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天狐あやかし秘譚

第54章 捲土重来(けんどちょうらい)


☆☆☆
違和感を覚えた。

虫に乗って移動していた奴らが、空中から森に降り立つところまでは見えた。今、俺の右上には、浮遊しつつ敵を追う天狐の姿、左後ろにはピッタリと瀬良がついてきてるのを感じている。

しかし、奴らの気配は全く感じられない。
これが違和感の正体だ。

「止まれ、天狐はん」
立ち止まり、天狐に声を掛ける。あの狐はものすごい強いのだが、チーム戦には全く向かない。早めに指示を通しておかないと、独走しかねない。

「どうなさいました土御門様」
「気配がない・・・多分、隠形や」

自らの気配を何らかの方法で消して潜む術は総称して隠形と呼ばれる。高等な術になると直接視認することすら妨げることもできる。敵があの大鹿島の結界を抜けられるわけがない以上、隠形術を用いてそのあたりに潜んでいると考えるのが妥当だろう。

そうなると、罠を張っている可能性が高い。

俺の警戒心が伝わったのか、瀬良も周囲を伺い、警戒態勢を取る。天狐はゆっくりと降り立ち、綾音を地面に立たせていた。

疱瘡神の気配もないところを見ると、人に戻っているのかもしれない。どんなに高度な術式であっても、神の気配を完全に消し切る隠形結界を張るのは、無理とは言わないが、時間が足りなさすぎだろう。

ただ、相手は神宝の使い手である。万が一ということも有りうる。警戒するに越したことはないな・・・。

「罠があるかもしれん・・・注意して進めやな」
俺は五芒が描かれた符を一枚取り出すと、二つ折りにして口に咥えた。そのまま青龍勧請の呪言を唱える。

「前五 青竜 木神 家在 寅主銭財 慶賀吉将」

符が輝き、青龍と化す。もちろん、ある程度の呪力がある人間にしか、その姿を見ることはできない。符から生まれた半透明の猛き龍が天に立ち昇っていく。

先ほど疱瘡神を連れた鉄研を追いかけさせたのもこの青龍だ。
今日は、青龍、大活躍やな・・・。

青龍はその性は木であり、このような森の中ではより一層力を発揮することができる。

「さあ・・・かくれんぼは・・・そっちにとって悪手やってこと教えたるわ・・・」
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