第51章 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)
刹那、晴れているはずの天から雷光が落ちてくる。その雷光は突き立てた槍の穂先に落ち、八条の稲妻となって周囲の空間を穿った。
稲妻は虫たちを一瞬で消し炭にし、盛り上がった植物の根を寸断する。
そして、そのままシラクモと俺の胸を貫いた。
「がはぁ・・・」
身体の内側を特大のハンマーで叩かれたような衝撃に、一瞬で意識が持っていかれる。足玉のお陰で身体は死ぬことはないが、精神がついていかない。
俺は、膝をついてしまう。
『金剛縛鎖!』
俺が動けなくなった一瞬の隙、それを敵は見逃さなかった。あっという間に体に金属の鎖が巻き付き、身動きが取れなくなる。どうやらこれは土御門の陰陽術のようだ。
ここまでぐるぐる巻に手足を縛り上げられてしまっては、先程のようにシラクモを回復させることもできない。
万事窮すだ。
それにしてもあの狐、何だ、あの妖力は・・・。あれではまるで・・・まるで・・・
神・・・のようではないか。
その神狐が、トントンと手に持った古槍で肩を叩きながら歩み寄ってくる。あちらでは土御門と女陰陽師がシラクモを縛り上げているところだった。
俺の背後では真白が未だに動けないでいる親父殿のそばで震えている。
クソ・・・なんで・・・なんでこんなことに!
スッと俺の首元に、狐の古槍の穂先が突きつけられた。
冷たい目で狐が俺を見下ろした。
「綾音を狙えば我に勝てると・・・?
もう、飽きたぞ・・・さっさと知ってることを話せ
・・・疱瘡神は・・・どこにおる?」
ぐいっと穂先が首にめり込む。もちろん、神宝の力で死ぬことはないが、この狐、おそらく俺が音を上げるまで何度でも切り刻む気だろう。
畜生・・・!
結局、俺は何も守れない。
お前の願いを叶えてやることもできない。
身動ぎをしようとジタバタしてみるが、強力な術で捕縛されているようで、全く動くことができない。ただ、狐を睨みつけることしか・・・。
「仕方ない・・・一度、その頭ふっとばしてみるか?」
多分、やろうと思えば刹那でできる行動を、わざと俺の恐怖心を煽るためにゆっくりと行う。穂先がこめかみに据えられ、少し引き離される。
確かに足玉の力で死ぬことはない、と頭では理解っているが、動けない身で頭をふっとばされそうになる恐怖心自体はどうにも防ぎようがない。