第44章 真実一路(しんじついちろ)
笑顔の環がゆっくりと透けていく
ありがとうって・・・なんで、そんな・・・私、こんなダメな母親なのに・・・。
「ママ・・・バイバイ・・・」
環が消えてしまう・・・。最後に・・・最後に・・・。
笑ってほしい・・・そう言うなら。
私は、ぐいと流れる涙を袖で拭い、強引に口角を上げた。
だったら、せめて、無理矢理にでも・・・笑った顔を・・・望み通りに・・・。
「環・・・バイバイ・・・お空で待ってて・・・ママ、ちゃんと迎えに行くから」
『うん・・・環、お空にいるから。ちゃんといい子で待ってる。だから、ママ・・・お空に来たとき、環にたくさん楽しいお話をしてね。』
『私・・・ママの子に生まれて良かったよ。良かった。本当に・・・ありがとう・・・。』
『最後に・・・ママ、笑ってくれて・・・嬉しかった。バイバイ・・・またね・・・』
そう言い残して、環の姿は、闇に溶けて・・・消えてしまった。
最後の言葉は、まるで自分の胸の中に直接響いてきたような気がした。
環が消えた闇の向こう、窓の外には、いつしかチラチラと雪が舞っている。
環が完全に消えてしまった。そう思うと、こらえていた涙がまた、ぼろりと落ちてきてしまう。
ぼろぼろ、ぼろぼろ。
止めることが出来なかった。
やっぱり無理だよ・・・環。
環がいないのに、笑ってなんていられないよ・・・。
でも、笑ってないと、環が心配するなら・・・頑張らなきゃいけない。
頑張るよ・・・でもさ、お願い・・・今だけ・・・今だけ・・・許して。
ちゃんと泣いたら・・・いっぱい泣いたら、ちゃんと、笑えるように、お空で、いっぱい環に楽しいお話ができるように・・・するからさ・・・。
環が消えた病室。
窓の外にはしんしんと雪が降り続いていた。
私は、環のプレゼントを胸に抱きしめて、今だけと、ただただ、涙を流し続けていた。