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天狐あやかし秘譚

第36章 正真正銘(しょうしんしょうめい)


仕方がない。一旦ここは距離を取って・・・。一応結界のせいでやや体のバランスを崩した相手を見失わないようにステップバックしながら遠ざかる。そんな私のもとに綾音さんが駆け寄ってきた。

「お願い、宝生前さん」
おそらく圭介に聞かれることを恐れたのだろう、その後は小声で先程の土饅頭の間から左近次という人間を探し出してほしいと言ってきた。そのものならばもしかしたらホシガリ様の真名を知っているかもしれない、と。

「しかし、あの圭介は今や人間離れした力を手に入れています。妖怪と言ってもいい。私ですらどうしようもないのに、どうやって?」

ダリさんのところに誘導するのはやめておいたほうがいい。ホシガリ様と共闘されたら面倒なことになる。かといって、綾音さん一人、いや、草介さんが加わっても今の圭介を止めるのは難しいだろう。

「大丈夫!」

綾音さんが笑う。手には、私が預けた石針があった。
結界はダメでも、脳震盪なら通じるかも?

でも、戦況は膠着している。そして、膠着している場合、無尽蔵の物量と不死の力を持つ向こうのほうが確実に有利だ。ここはひとつ賭けに出るしかないか・・・

「わかりました。時間を稼いでください。5分・・・いや、3分でなんとかしてみせます」
私は一本また地面に石釘を打った。

「石動(いするぎ)!」

呪言と共に大地が一気に盛り上がる。単純な術式ながら、目眩しと時間稼ぎには有効だろう。

土壁に視界を阻んでもらっているうちに私は左、綾音さんは右に走り出した。

「圭介!私が相手よ!」
綾音さんがなんとか圭介を挑発しようと声を上げる。あんなのに、乗るかな?

「ぐおおおお!!!」
妙な雄叫びを上げ、圭介が綾音さんの方に方向を変えた。どうやら、力の増大に伴い、凶暴性が増しているようだ。思考が単純になっている。

なんとか・・・なるかもしれない。

待っていてくださいね。なんとか、死なずに・・・あなたが死んだら、多分天狐が怒り狂って・・・この島どころか、日本が壊滅ですよ・・・。
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